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5巻37章でダンブルドアはこう言っています。
「I am a sufficiently accomplished Legilimens myself to know when I am being lied to ....」
Legilimency(他人の感情や記憶を引き出す能力)に長けているので、嘘をつかれればわかる、と
いうようなことを言っているのですが(日本語表現というか訳が適切でなかったらすみません)、
それでは、なぜ…?と思うようなこと、ありませんでしたか。
Legilimency以前の話としてもファンの間ではささやかれていたことですが、
もし、本当にダンブルドアが偉大な魔法使いであれば、なぜ、彼等を「闇の魔術に対する防衛術」の
教師として雇い続けたのでしょうか?
- ヴォルデモートにとりつかれたクィレル
- はったりのロックハート
- ムーディに化けたクラウチJr.
クィレルが最初に雇われた時点ではまだヴォルデモートにとりつかれてはいなかったのかもしれませんが、
途中で様子が変わったらおかしく思わないのでしょうか。
そんなに簡単に解雇するわけにはいかないのでしょうか。
スネイプは怪んでいましたが、ダンブルドアはどうだったのでしょう?
ロックハートについても、雇った後で、しまった!と思ったのでしょうか?
ムーディに関しては、雇用契約を結んだ時点では本人だったはずですが、
ホグワーツに着任してきたのはクラウチJr.の化け姿です。
正体がばれたときのダンブルドアは本当に怒っている様子でしたが、
1年弱の間、まったく怪しまなかったのでしょうか。
Legilimencyに長けているとなれば、ますます不思議です。
クィレルとにせムーディに関しては、彼らが閉心術(Occulmency)をはたらかせていたのかと好意的に解釈することも可能ですが、ロックハートに関してはそれはないでしょう…。
Sevrus Snape と Wormtail こと Peter Petigrew.....
あまり並べて語られることはない二人のキャラだと思いますが、
結構類似点がありません?
ハリーのお父さんの同級生。
どちらも、他の生徒から慕われたりするような素質を持ち合わせていなくて
はっきり言って人気がないタイプ。
…なのに、二人が辿った運命は大きく違ってきます。
片や、生徒の人気ものグループ(James, Sirius, Lupin)に仲間入り。
片や、その人気ものグループからのいじめられっ子。
仲間入りしながら、劣等感を持ち続けるのも辛そうですが、あからさまに
いじめられるのも辛い…。
その後、詳しい経緯は不明ですが、二人とも闇陣営の支持者に。
この辺の経緯は、興味津津ですが、とりあえず置いておいて、
時間は流れ、一人はそのまま闇陣営に残り(戻り)、
一人は、現状の詳細は不明ですが、闇陣営から離れた様子。
未だ語られていない過去のことも含め、今後、この二人が辿る運命には注目です。
シリーズ最長の5巻。
いたるところ、ディテールが書き込んであって面白いですが、ここまで長い物語となると、
書き込まれているわりには、クライマックスへの伏線になっていないものもちらほら。
ひょっとして、6巻、7巻への伏線?
そんな項目をピックアップしてみます。
七変化(Metamorphmagus) のトンクス(Tonks)
5巻で初登場の新キャラの中では、随所に登場し、かなり目立っている方と
言えます。
でも話の本筋に密接にからまっているかというとそうでもありません。
- ダーズリー家から騎士団本部までのハリーの護衛の中の一人で騎士団の一員
- ダーズリー家でハリーの荷造りをしてくれた
- (新米)闇祓い
- 神秘部にハリー達の助けにかけつけてくれた騎士団のメンバーのうちの一人
これだけの役割を担っているのですが、例えば、これが別のキャラ、さらに場面ごとに別々のキャラに割り振られていても何ら不都合のないように思われます。
一貫して、Tonks が担う必要の役割とは思えません。
さらに言えば、七変化という性質はいったいどんな意味があったのでしょう?
トンクスのこの性質と、ちょっとドジ、という性格が、暗く湿っぽくなりがちな騎士団本部の中を明るくしていたような気はします。
が、それだけのためだとしたら、大げさすぎます。
きっとこれは次巻以降への伏線になっているに違いありません。
ルーナ・ラブグッド
5巻で初登場人物の内、アンブリッジ(Umbridge)と共に章タイトルに現れた新キャラ。
…のわりには、いまいちな感じがするのです。
ハーマイオニーとは正反対とも言える性格で、描くのが楽しかった、と
著者ローリングさんは言っているようですが…。
ハーマイオニーにしても、かなり変わっている方だとは思うのですが、
別の意味でルナも変わっています。
「ハグリッド…先生としてはどうかしらねぇ〜」と
ハリー達とは違う第三者的な立場ではっきり言ってくれるキャラも
初めてです。
- ホグワーツ特急で同席
- お父さんが The Quibbler というジョーク雑誌の編集長。反魔法省(大臣)派。
- 上級生用の馬車をひく馬が見える
- DAのメンバー
- 第三者的な立場をとりながらもハリー達に加担。神秘部へ一緒に忍び込む。
- 学期末のお祝いパーティーを抜け出しているハリーと出会う。
大まかにこれだけの役割を担っています。
同じキャラがこれらの役割を担うことで話がスムーズに流れているといえば
そうですが、場面ごとに別々のキャラに割り振られていても、それはそれで
不都合はないように思われます。
上級生用の馬車をひく馬が見えることは、例えばネビルに言わせてもいいわけですし…。
神秘部へ忍び込むメンバーは、ハリーに加え、ロン、ハーマイオニーは当然として、
ジニーはなんとなくわかります。Order 本部でハリーの夢の苦悩をまのあたり
にしていたわけですしね。
ネビルはなりゆきっぽいですが、神秘部へ忍び込んでからの彼の姿が感動的だったので、
ぜひネビルには行ってもらわねばなりません(笑)。
そこで、ルナは?
そもそもアンブリッジの部屋に忍び込むのを加担したなりゆきですが、では
なぜ加担する気になったのか。偶然そこを通りかかったのも出来すぎ(苦笑)。
極端な話、ルナが一緒に行かなくてもいいようなそんな気もします。
そして、最後にハリーと出会う場面は本当に必要な場面なのかどうか、
未だ疑問です、個人的には。
ホグワーツ特急で偶然同席したのをきっかけに、どんどんハリー・サイドに
引き込まれているのですが、未だ立場が中途のような印象です。
今後も、第三者的な立場からハリー達に影響を与えていくような、そんな気がします。
巨人 Grawp
一応章タイトルになった新キャラ…。
「禁じられた森」でハリー達の窮地を救ってくれるという大役を果たしました。
それで充分といえばそうなのですが…。
ただし、問題は、ハグリッドの弟なんです。
同族からは孤立無援になってしまった巨人なんです。
ハグリッドは当然、世話しつづけるでしょうから、
今後ハリー達に影響が皆無とは言えないでしょう。
ハーマイオニーを「ハーミー」と呼ぶなど、若干進歩が見られますし、
交渉決裂してしまった巨人族との橋渡しをするなど、
何らかの役割がまだ残っていそうです。
ミンビュラス・ミンブルトニア(Mimbulus mimbletonia)
ネビルの持っていたレア植物ミンビュラス・ミンブルトニア。
ハリーは、この植物が出すスライム状の物質を運悪く浴びてしまったところで、チョウに出会い気まずい思いをします。
ハリーとチョウの関係を描く上で、気まずい思いをする場面を作り出す必要があったのだと思われますが、そんな場面を作り出す方法ならいくらでも他にも考えられると思います。
ですから、むしろ、この植物のもつ性質が強く印象づけられる場面です。
グリフィンドールの入り口の合言葉が、たまたま「ミンビュラス・ミンブルトニア」。
そのため、いつも合言葉を覚えられないネビルがたまたま知っていて、ハリーも一緒に寮に入ることができます。
既に寮内には、フレッドやジョージもいたのですから、ハリーがむしゃくしゃしていて合言葉を知らなくて…という場面に助け舟を出すのはネビル以外にもいくらでも考えられます。
ここまでくると、ミンビュラス・ミンブルトニアは絶対何かの伏線になっていると考えたくなってしまいます。
29章
ローリングさん曰く次巻へのヒントがある章だとか。
ここでどんなことがあったか簡単に整理してみましょう。
- ペンシーブに移されたスネイプ最悪の記憶で、ハリーは父親の若き日の
姿を見て思い悩む。
- 進路相談の面談を受ける。ハリーの希望は闇祓い。
- 双子の助けを借り、シリウス(とルーピン)から、学生時代のことを聞かせてもらうことに成功。
- 騒ぎを起こしたことで双子は颯爽と自主退学
どこがどうヒントなんだかさっぱり…なんですが、過去(自分の過去ではなく親が自分くらいの年代だった頃のこと)と将来、がキーワードですか?
- たぶんハリーの父親やスネイプの学生時代のことが何らかの方法でもっと明らかになる。
何らかの方法ってなんでしょうね。生き証人と言える人は、
ダンブルドア、マクゴナガル、フリットウィック先生?、ハグリッド、
スネイプ、ルーピン、…まさかワームテイルはないでしょう…、
あるいはもっと別の誰かが現れる?
- ハリーとスネイプの間に生じているわだかまりも変化する。
- 卒業後の進路に向けて具体的な行動が開始される。
ちょっと辛口かも。 でもこの5巻を楽しめなかったというわけではありません。
Harry Potter シリーズ1〜5巻までの中で、この5巻目が一番好きだという人は、 私も含めておそらくいないのではないか、と思います。 ちょっと言葉は悪いですが、1〜4巻までの積み重ねがないと読めないシロモノ。 これまでわからなかったいろいろな謎や、インタビューなどで著者のローリングさんが 明らかにしてきたことが、この5巻に盛り込まれています。 ですので、有耶無耶していたことがスッキリはします。 でも、それは1〜4巻を読んでいたからこそ、その部分を面白いと思えるのです。 そういった要素を取り除いてしまうと、5巻にはいったい何が残るでしょう?
怒れる若者
ハリーは最初から怒っています。
そして始終、怒っています。
そして、ヴォルデモートの罠にはまり、他人を巻き込んでしまったのは、
自分のせいだと、自分に対しても怒りを感じます。
怒りを感じるのは決して悪いことではありません。
では、ダンブルドアの説明で、ハリーはこの怒りを静めることができたでしょうか?
怒りを自分の成長の糧として昇華することができたでしょうか?
それについては疑問を感じます。
この5巻を通じて、ハリーはいろいろなことを体験しましたが、ハリーが成長した、
ということを感じられないのです。
怒りを感じるのは OK です。でもずっとそのままでいいのでしょうか。
1年間の体験を通して、すぐに成長しろ、っていう方が、現実的には無理な話ですが、
物語としては完結しません。
ハリーが体験を通して脱皮できるのは、今後の6,7巻に見送りです。 続編が続くとものと思わなければ、5巻の終り方は、満足できるものではありません。 4巻までの積み重ねがないと読めないだけでなく、6巻以降の続きが約束されていなければ、 やはり読めないシロモノと言わざるを得ません。 (幸い続きは約束されているようなものですが、今度は、何年待てばいいのでしょう?) そのわりには、4巻のように、続きが気になるようなスリリングな終り方をしているわけではなく、 物足りなさが残るだけです。
ヒーローの不在
クライマックスで戦いが繰り広げられますが、ハリーはヒーローになれたでしょうか?
前作まででも、ハリーのヒーロー性が乏しい、という批判はありましたが、
5巻ではハリーのヒーロー性は0と言ってもいいくらいです。
友人や応援の大人が次々と倒れる中、ハリーが重傷を負うことなく戦いを切り抜けられたのは、
敵に生かされていた、という面があります。
prophecy のため、ハリーは無事だったのです。
そして、ハリーが罠にはまらなければ、この戦いはなかった、とも言えます。
ダンブルドアは、自分の落ち度だとハリーをなぐさめます。
仮に、ダンブルドアのせいだとしても、無益な戦いであることには変りありません。
魔法省…というかファッジが目を覚ましたという、進展はありますが、
それにしては犠牲が大きいように思います。
こんな戦いを切り抜けたとして、ハリーをヒーローと言えるでしょうか。
物語を彩るキャラクター達
一方、今回、株をあげた(そして、主人公に勝る活躍をした)のは、 なんといっても双子ではないでしょうか。 私は、特に双子のファン、双子びいきではなかったのですが、 この5巻での活躍には惚れ惚れしました。 時には頼れる兄貴のようでもあります。 自分達の夢を追ってしっかり地に足をつけた感じがなかなか良いです。 そして、最後に、帚にまたがり颯爽とホグワーツを去って行く姿、目に浮かぶようです。
そして、ネビル。 今回はほんと底力を見せてくれました。 ネビルの頑張る姿には、心を打たれるものがありました。
ジニーも株をあげた登場人物の一人でしょうか。 さりげなく、成長を感じさせられますね。
幸先良かったロンは、クィディッチのスリザリン戦でプレッシャーに負け落ち込みましたが、
その後のレイブンクロー戦でしっかり克服しています。
お馴染みのキャラが、それぞれ成長を感じさせるだけに、
ハリーが怒るだけに終始しているのがくっきりと浮かび上がってきてしまいます。
新しく登場したのは Luna Lovegood ですが、章タイトルにまでなったわりには、 本当に必要な人物だったのかどうかやや疑問を感じます。 そんなことはないでしょう、とおっしゃる方もいらっしゃると思いますが、 Luna がらみの部分をばっさり切り捨てる、あるいは、別のキャラに置き換えるなどしても 物語の大筋に影響はないと、私は思うのですが。大胆すぎます?
Tonks も新キャラでした。
本当に必要必須なキャラ?という点では、Luna と同じようなものを感じますが、
章タイトルという看板を背負っていないだけ、そんなものかな、とも思えます。
ただ、Metamorphmagus という性質は、わざわざページを割いて説明するほどのものだったかは
疑問を感じます。普通の魔女ではいけないの?
後述のヤングアダルトのハリーを描き出すにあたっても、
重要な役割を果たしているとは思えません。
Luna も Tonks も今後6,7巻でさらに活躍する場があるのでしょうか。
もしそうだとすると、やはり、この5巻は全7巻の通過点という印象がさらに強まることになります。
株を大きく下げたのは、チョー・チャンですね。
彼女は、ほっておいてももてるタイプなのでしょう。
エキゾチックで、小柄で、外見も仕種も声もしゃべり方も表情もかわいくて…(←私の想像も入っています)。
ハリーと急接近し、ハリーを支持したのは、
ハリーがセドリックの最期を見たただ一人の人物(デス・イーター以外)だったから。
彼女の興味は、ハリーというよりはセドリックにあったわけです。
もちろん、セドリックを凌いで優勝したハリー自身にまったく関心がなかったとは思いません。
ただ、その場合でも、セドリックとの比較対象なのです。
こう言ってしまうと、彼女が計算高いようにも思えますが、セドリックの死に動揺したのは彼女も同じ。
悪気はなかったと思います。
ハリーとチョーの様子は随所に出てきます。
当然そういう年頃ですが、物語の本筋とうまくからんでいないように思います。
描写も単純。チョーの手をスニッチに見立てたところが笑えたくらいで(笑)。
チョーはハリーより年上の設定ですが、言動の幼稚っぽさはハリーと同程度。
壊れるべくして壊れたとも言えます。
ハリーの両親のジェームスとリリーがつきあうようになったのは7年生になってから、と
いう話が出たとき、ハリー&チョーの線はなくなったな、と思いました。
もともとこのペアを応援する気はまったくなかったので、どうでもいいことですが。
さて、五巻のキーパーソンといえば、アンブリッジ。 強烈な方でした…。 でも、結局のところ、彼女の本当の狙いはどこにあったのか、どういう戦略だったのか、 いまいち不明。 ハリーに意地悪する役としてはうまくできていましたが、アンブリッジ自身が、 敵キャラの中にも魅力を秘めているような役ではありません。 この方に関しては、五巻中にギャフンという目に遭ってくれてホッとしました。
そして、屋敷しもべ妖精の Kreacher もちょっと注目すべき存在でしょうか。 彼はハリーに、シリウスはここにはいない、と言います。 それは嘘だったのですが、それをなぜ見抜く、あるいは可能性として 考えることができなかったのでしょうか。 読者の立場からみても、充分怪しかったのですが…。 彼は主をなくしたあわれな屋敷しもべです。 ある日突然(?)現れた新しい主に、快く仕えていたわけではありません。 その様子は見てとれました。 嘘つき、と片付けてしまうのは簡単ですが、むしろ、 どちらかといえば犠牲者のように思えてなりません。 それゆえ哀れなものを感じます。
迷う大人達
怒り、とまどいを感じるのはハリーだけではありません。
「〜秘密の部屋」の時にもその兆しはありましたが、今回、Umbridge という人物が登場することによって
大人達 … ホグワーツの先生達も怒りやとまどいを覚え、その態度をあらわにしてしまいます。
そして最後には、ダンブルドアでさえ、ハリーに「弱さ」を見せてしまうのです。
権力と正義は必ずしも一致しない、そんなことは今までにもあったことですが、
今回はそれが大きく陰を落としてきます。
不条理なものを含む大人の世界…そんな世界を垣間見せられ、ハリーは大いに困惑します。
権力に巻かれるパーシーという人物はなかなか面白い見本の一つかもしれません。
そして、自ら大人になることを拒否しているような大人ともいえるシリウス。
正義だからといって、常にそれを再短距離で通すことはできない、
そんな不条理さが描かれているのもこの5巻の特徴でしょう。
正しいと信じて努力してもすぐ結果に結びつかないもどかしさ、
屋敷しもべ妖精の件でハーマイオニーが4巻で一早くそのような体験をしています。
善悪に簡単に塗り分けられない世界…。
「〜賢者の石」「〜秘密の部屋」で言われた、勧善懲悪の物語、というレッテルは
もうあてはまりません。
さらに、ハリーは、自分の父親に対して抱いていたヒーロー観を砕かれます。 完璧な人間はいない、と当たり前なことなのですが、ハリーはショックを受けます。 大人の世界にも完全無欠なヒーローは不在です。
タイトル
The Order of the Phoenix というタイトル、日本語では「不死鳥の騎士団」となるようですが、 物語の展開と少しずれているような印象を受けます。 内容から考えると Harry Potter and The Prophecy という感じですが、これでは、 ややネタばれの上に、シリーズのタイトルを並べた時に音節が足りなくてゴロが悪いですね。
舞台
今回、新たに加わったのは魔法省ですが、舞台装置として地味。 派手さ満載だった4巻の後だけに、この地味さが凡々とした印象を与えてしまいます。 地味だから悪いというわけではありませんけどね。
ディテール
そして、長さ。 これだけ長い物語があっていけないということはないのですが、 もっと簡潔にまとめる工夫をしてもいいのではないでしょうか。
この5巻が、全7巻のストーリーの中で通過点的な役割を果たすとしたら、
通過点としてこのヴォリュームは長すぎるように感じるのです。
読者の疑問に答えるべく、ディテールをかなり書き込んでいるように
思われるのですが、終始、説明に徹しているような印象を受けます。
授業の描写が続く12〜15章はかなりだれた感じがします。
単行本を読んでいるより連載ものを読んでいるような気分。
映画ではなくシリーズドラマ。
そんな印象を受けます。
もう少しメリハリが欲しかったかな、と。
映画と言えば、映画公開後に初めて出る新作が、この5巻なので、読者の数は
それまでよりかなり増えていると想像できます。
そして、その読者からよせられる質問、疑問もたくさんあるのでしょう。
それらに、著作を通して答えようという努力があったのではないか、
と思うのですが、それが、物語のまとまりとして足を引っ張ってしまったよう
に感じられてなりません。
マニアックな研究対象としては面白いのですけどね。
…と、文句をたくさん書いてしまいましたが、ローカルにはとても面白いのです。 3年かけて、文章一つ一つに推敲吟味を加えたのだろうと思うくらい、その場面、場面は 楽しめます。
ヤングアダルト文学としての Harry Potter
この5巻を一言で言うならば、ヤングアダルト文学、という言葉が一番
しっくりくるのではないかと思います。
子供でもない、大人でもないヤングアダルトのハリーを、とてもうまく
描き出していると思います。
そして、そのハリーをとりまく、必ずしも完璧ではないたくさんの大人達
(苦悩も見せるダンブルドア、母親としての心配を露わにするウィーズリー夫人、
父親としてのウィーズリー氏、そしてスネイプ、シリウス…)、
権力に巻かれるパーシー、
自分達の夢に向かって颯爽と羽ばたく双子、
着実に前向きに進んでいる親友ロン…、その対比は見事です。
そんな人々に囲まれ、そろそろ自分の将来について真剣に考えるべく、
進路指導、OWLテストと続くのです。
シリウスはゴーストにはなりませんでした。
まず、シリウスにとってこれは良かったことだと思います。
どこか大人になりきれていなかったシリウスですが、思いを残すことなく、
この世を去っていくことができたのは、シリウスにとって一皮向けたと
言えるのではないでしょうか。
その事実を、ハリーは納得しているようには思えません。
今はまだ悲しみの方が大きくて、この悲しみを乗り越えればそれが自分の成長につながるのに、
その壁を越えるのを拒否しているような印象すら受けます。
もちろんハリー自身は、悲しみを乗り越えることが自分の成長になるとはまだ気付いていません。
でも、いつかシリウスの死を理解することができるようになったとき、
ハリー自身が成長して一皮向けることができるのではないでしょうか。
(私はハリーではないので、こんなことが簡単に言えちゃいますが)
この5巻で、ハリーは大人になる通過点として必要な体験を、
いろいろと経験したので、今後、どういう人生を自分で選び取っていくか、
宿命にどう立ち向かっていくか、期待は膨らみます。
ハーマイオニーが何を考えているかわからないまま、
ハリー、アンブリッジの計3人は玄関ホールにやってきます。
まさか、このまま、夕食時の大ホールに飛び込む?…わけはなくて、外に出ます。
外に出るということは、やはり「禁じられた森」ですよね。
というわけで、森に入ります。…ということは、ハグリッドの弟の巨人?
と思ってしまうのですが、ハーマイオニーはそちらの道ではなく、
アラゴグのいる場所へ通じる道を進んで行きます。
ハーマイオニーはアラゴグには会っていません。
おまけにアラゴグの所に行ったら、アンブリッジだけでなくハリーと
ハーマイオニーも危険です。
空飛ぶ車はもう森の中には無いようだし…、とすると…?
かなり奥まで入ったところで、3人はケンタウルスの一団に囲まれました。
やっぱり狙いはこれでしたか。
ケンタウルスは「子供は襲わないはず」というところがポイントですね。
…が、ハリーもハーマイオニーももう15歳。
子供というのはなかなか微妙な年頃なのです。
おまけにハーマイオニーが余計なことを言ったものだから、
ケンタウルス達を怒らせてしまいます。
ピーンチ!
…となったらそこに現れるのは巨人しかいません。
ハーミーことハーマイオニーを助けてくれる、という明確な意図が
あったかどうかは定かではないですが、結果オーライ。
そこへうまく脱出したロン、ジニー、ネビルが追いつきます。
ハリーの関心事は、一刻も早くシリウスを助けに魔法省へ行くこと。
すったもんだの押し問答の挙句、6人全員が、森にいる魔法生物に乗って、
飛んで行く事になりました。
…んな無茶な…。
どう考えても、ホグワーツ特急より速いスピードで飛んだとしか思えないのですが、
それが『魔法』生物たる所以でしょうか。
ハリーがヒヤリングの時に魔法省に来ているので、入り方は問題なし。
真夜中の魔法省の中を進んでいくと、そこにいたのは…。
巨人、ケンタウルスとの不和、ヒヤリングで魔法省に来たこと、
ハグリッドの授業内容など
これまでちりばめられてきた要素が、ここにきて、再び使われます。
いつものやり方ですが、物語も収束に近いことが感じられます。